あなたの愛する人が心を病んだ時に

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝来てから、レセプトを整理して、
今日は胃カメラの日なので、そのカルテをチェックして、
ちょっと慌しい気分で今PCに向かっています。

おたふく(流行性耳下腺炎)が、
流行っているようです。
以前にも書きましたが、大人になって罹ると、
特に症状が重くなりますので、
以前罹ったかどうかはっきりしない方は、
是非抗体の検査をお勧めします。
勿論、診療所でも対応しています。

さて、今日の話題です。

これは、前から一度は書きたいと思っていたことです。

結婚しているお2人か、
結婚はされていなくとも、
長く一緒に生活されているカップルで、
そのうちの一方の方が、
心の病気になった場合の話です。

色々なケースが考えられるんですが、
特に僕がよく遭遇するのは、
奥さんが心の病気で相談にみえて、
ご主人との関係が、
病気をきっかけにぎくしゃくしてしまった場合の、
ケースですね。

関係が修復された例は、
勿論ありますが、比率は少ないですね。
離婚されたり、別居されたりする場合が、
多いのが実際です。
病気の経過が長くなるにつれて、そうした傾向は高くなりますね。
よく美談みたいなものが、
ドラマになったり、ドキュメンタリーになったりすることがあるでしょう。
そんな例は、本当に希少だと思います。
勿論、だからこそ美談なんでしょうけどね。

ご主人が相談にみえて、お話をさせて頂いたことも、
何度かありました。
でも、どちらかと言えば、
ご自分の辛さを一方的にお話されることが多いんですね。
「俺にこれ以上、何をしろって言うんだ」
みたいに、逆ギレされる方もいらっしゃいます。
僕は結局、
「もっとよくお話する機会を持って下さい」、
みたいなことを言うしかないんです。
言葉はそういう時、
不毛ですね。
でもね、本当に言いたいことはこういうことです。

「あなたは少なくとも一度は、
この人を大切に思ったことがあるんでしょう。
この人は今苦しんでいるんです。
今この瞬間、あなたはこの人に愛情を持てないかも知れません。
この人はとげとげしくなり、あなたを攻撃し、
過去のあれこれをあげつらい、
今までの楽しかったことすら、
全て否定するような言動をするかも知れません。
醜い獣のような姿を、
あなたに晒すでしょう。
でもね、その醜さはあなたの心の中にもあるものなんですよ。
この人は、そのことであなたを試しているんです。
そんなことをするのは卑怯だと思いますか。
そうですね。
でも、そんな卑怯なことをするのは、
この人にとって、あなたしか頼るものはないからなんです。
苦しくて、苦しくて、
あなたを最後の拠り所にしているんです。
優しくしてあげて下さい。
助けて欲しいんです。
あなたにはそれが出来るんですよ。
もし、1人の女性を救うことが出来たら、
それだけであなたの人生は価値あるものだ、
とは思いませんか。
逆にそれに代わるどんな価値がこの世にあるでしょうか。
そのことよりも仕事を選びますか?
他にもっと『まともな』女の人を探しますか?
それは逃げですよ。
逃げても、絶対に人生は良いものにはなりません。
あなたの人生は、あなたにとっての生きるということは、
今目の前にあるんです」

ちょっと感傷的過ぎるでしょうか。
でも、僕は本気でそう思うんです。
こんなこと、とても診療の現場では、
言葉に出来ないですけどね。

逆にお年を召した、
互いに依存の強く形成されたカップルで、
互いを酷く傷付け合いながら、
生活されている例もありますね。
たとえばご主人が脳梗塞で倒れて、
寝たきりになって、
奥さんは献身的に看病をされているんですが、
そんな奥さんに病身の夫が暴力を振るい、
毎日奥さんに罵詈を浴びせ続けるんですね。

怖いですけど、よくあることです。

人間の追い詰められた憤りは、
結局身近な弱い対象に向けられるんですね。

この場合の奥さんは、決して逃げられない立場ですよね。
でも、本来はこの奥さんこそ逃げるべきだと思います。

身体の障害を持ったパートナーからは、
どんなことがあっても逃げられず、
精神的な病を持ったパートナーからは、
時に安易に逃げて行く。

これは社会の仕組みの問題なんでしょうか。
人間の弱さの問題なんでしょうか。
時々そんなことを考えます。

非常に難しいことですけど、
常に逃げないようにしたいですね。
それで得になることなんて、ないんでしょうけど。

皆さんはどうお考えになりますか?

そろそろ診療時間になりますので、今日はここまでにします。

週も後半に入りました。もう一息頑張りましょうね。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック